救いの船

生死の苦海(くかい)ほとりなし

ひさしくしづめるわれらをば

弥陀弘誓(みだぐぜい)のふねのみぞ

のせてかならずわたしける

 

これは親鸞聖人の和讃です。

親鸞聖人とは、現在の浄土真宗につながる教えを説いた僧侶で、生涯に渡り、真実の救いの道を追求し、その教えを広めていきました。

 

その親鸞聖人は、私たちが生きては死んでいくこの世を「苦海ほとりなし(はてしない)」と例えました。

 

私たちは普段、固い土の上で生活しているせいか、人生というものは安定したものであり、また安定したものであるべきだと考えがちです。

 

しかし実際は、様々な問題を抱えて、どうにか一つを解決できたと思ったら、また新たな問題が起こり、心が休まるときがありません。大なり小なり、心配事に頭を悩ませながら毎日を送っているということに気がつくでしょう。

 

それは、まるで海上で漂いながら、溺れないように必死にもがき続けている遭難者のようです。

しかし、やがて時が来れば、力尽きて海の底深く沈んでいくことになります。

 

その深く、広く、果てしない苦しみに満ちた海に漂う私たちを、救いの誓いを立てられた阿弥陀仏の大船が救い上げて、極楽浄土へ連れて行ってくださるのだと、親鸞聖人は仏の救いを称えたのです。